◆中韓むしろ理性的「イルカ漁」報道…欧米メディアは感情むき出し
　 「海水を赤く染めながら殺していく」

イルカの「追い込み漁」が和歌山県太地町で漁期を迎えている。
欧米の反捕鯨団体などから「残酷だ」などと強いバッシングを受けているが、
各国メディアの報道を見ても、欧米を中心に厳しいトーンで太地町の
イルカ漁関係者や日本政府関係者を非難する記事が目立つ。

一方、日本を“標的”にすることも多い中国、韓国のメディアはといえば、
なぜか尖（とが）った論評は差し控え、むしろ落ち着いて報道しているようだ。

◇厳しい英メディア

今年５月、日本動物園水族館協会（ＪＡＺＡ）が、
世界動物園水族館協会（ＷＡＺＡ）の除名通告を受けて、
太地町での追い込み漁で捕獲されたイルカの入手を会員施設に禁じた。
ただ、地元の漁協はこれに屈せず、今年も９月からの漁解禁に合わせて
追い込み漁をスタートさせた。

太地町で今シーズンの漁が始まった９月３日、英国の大手紙ガーディアン
（電子版）は「日本の町で恒例のイルカ漁開始」との見出しでさっそく報道した。
反捕鯨団体のメンバーらが反対を訴えるボードを掲げて抗議する様子の写真を
メーンに据えて「毎年、数百頭のイルカを湾に追い込み、海水を赤く染めながら
殺していく」などと、２００９年に公開され、太地町のイルカ漁を残酷だと
強調している米映画「ザ・コーヴ」での描写を引用するような表現。

「捕獲されるイルカの一部は水族館にも売られている」とも伝え、
「伝統の漁法だ」などとする日本側の言い分も載せてはいるものの、
全体的には厳しいトーンで批判している。

同紙は１０月２２日には、反捕鯨団体「シー・シェパード」への取材をもとに
「反捕鯨団体は、日本の漁師は海でイルカの死体を投棄していると主張」との
見出しで「太地町の漁師が子供のイルカを殺し、海に投棄した」などと報じ、
改めてイルカ漁そのものについて批判している。

英国メディアではこのほか、インディペンデント紙（電子版）も、
今シーズンの漁が始まった９月３日、「論争になっている太地町イルカ漁始まる」
などの見出しで批判的に取り上げた。

◇米メディアも批判的

米国のメディアも批判的な論調が目立つ。
ＣＮＮテレビは今年７月、米国籍のイルカ保護活動家、リチャード・オバリー氏の
インタビューを放映し、太地町のイルカ漁を強く批判した。

昨年は米国のケネディ駐日大使が
「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。
イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と
ツイッターに書き込んだことから、多くのメディアが「残酷だ」などと報道。

ＣＮＮテレビやワシントン・ポスト（電子版）などは、昨年９月の太地町での
イルカ漁開始時に「日本のイルカ漁がまた始まる」と批判的に報じている。

産経WEST　2015年11月5日11:00
http://www.sankei.com/west/news/151105/wst1511050005-n1.html
http://www.sankei.com/west/news/151105/wst1511050005-n2.html
http://www.sankei.com/west/news/151105/wst1511050005-n3.html
http://www.sankei.com/west/news/151105/wst1511050005-n4.html

※>>2以降に続きます。

※>>1の続きです。

◇韓国、中国メディアは…

一方、日本のことに関してはとかく厳しい論調の目立つ韓国メディアは、
イルカ漁について批判的な報道は目立たない。

韓国の環境保護団体が９月１日、ソウルの日本大使館前で追い込み漁中止を
訴えたことについて、聯合ニュースなどが報道。
韓国のインターネットメディア、オーマイニュースは９月７日、
イルカ漁が日本で始まったことや環境保護団体のソウルでの動きを合わせて
批判的に報じたが、他のメディアでは批判的な報道はあまり見られない。

これには、韓国も太地町からのイルカを多数輸入してきたことや、
犬を食べる習慣が諸外国に非難されてきたこともあり、
強い批判はできないのではとの見方がある。

また中国メディアでは、人民網日本語版が２０１３年１月に
「日本はなぜイルカ追い込み漁をやめないのか？」との見出しで報じたが、
イルカ漁の歴史や日本側の言い分も十分に載せた記事で、
批判一辺倒にとらえた内容ではなかった。
このほかにも、批判を強調したような内容の記事は、あまり見かけない。

これは、太地町で捕獲されたイルカの最大の輸出先が中国だったということが
背景にあるとみられる。

◇擁護するメディアも

イルカ漁に関して、欧米メディアの中にも日本側を擁護する記事もある。
雑誌「ＷＩＲＥＤ（ワイアード）」のイタリア版が昨年２月、
「なぜイルカだけが特別なのか？」のタイトルで報じている。

同年１月に和歌山県の仁坂吉伸知事が「我々は牛や豚などの命を奪って
生きている。食肉処理場には目をつぶって、イルカや鯨を殺しているところだけ
残虐というのは論理的ではない」と反論したことについて言及し
「それは正しい」と擁護した。

記事はさらに、各国の食の考え方などに言及した上で
「私たちは毎年、太地町で起きていることを映像や写真を通じて
たくさん見るけれど、牛たちの身に起こっていることを見ることはほとんどない。
ハンバーガーは私たちの日常に欠かせぬ食べ物であるし、
何について怒らなければならないかを私たちに教えているのは、
今回も、そしていつも米国だ。決して中国や日本ではない」などとしている。

※以上です。